第1章: 新たなスタート~塾講師からモバイルアプリエンジニアへ~

風の冷たい一日、大学を卒業した直樹は、新たなスタートを迎えようとしていた。彼の心はわくわくと不安でいっぱいだった。長い学生生活を終え、彼は教育の道を選び、小学校の教師としての職に就くことに決めていた。しかし、現実は彼の期待とは程遠く、最初の一歩からして彼を苦しめることとなった。

直樹は学生時代から教育に情熱を抱いていた。子供たちに知識と価値観を伝え、未来を明るくするお手伝いをすることに誇りを感じていた。卒業式の日、彼は家族や友人たちの祝福を受けて、新しいキャリアへの一歩を踏み出した。

最初の数週間は、彼にとっては新しい環境に慣れるための調整期間だった。彼は生徒たちとの関係を築き、授業計画を練り、熱心に教育に取り組んだ。しかし、それも束の間の幸せだった。

彼が就職したのは、ブラック企業として有名な学習塾だった。最初はそのことに気づかなかったが、次第に労働条件の厳しさに直面することになった。毎日のように長時間労働が必要で、有給休暇もほとんど取れなかった。さらに、給料は低く、教育への情熱を持っていたにもかかわらず、生活費を稼ぐことすら難しい状況に直面した。

それでも、直樹は諦めなかった。彼は教育への情熱を持ち続け、生徒たちの成長を見ることが、厳しい労働条件に耐える原動力となっていた。しかし、彼の周りでは多くの同僚が次々と辞職し、ブラック企業の実態が次第に明らかになっていった。

ある日、直樹は教師仲間から話を聞いた。彼らは教育以外の分野で働いており、その収入と労働条件がはるかに良いことを知った。直樹は自分の将来について考えるようになり、教育の道以外の選択肢を模索し始めた。

彼は夜な夜なインターネットで情報を探し、友人たちとの会話を通じて新しい道を模索した。そして、ある日、彼はITエンジニアという職業に出会った。プログラミング、システム開発、テクノロジーに関する情熱を持つことができ、それによって安定した職業と高収入を得る可能性があることに気付いたのだ。

しかし、彼には大きな問題があった。彼はプログラミングの知識も実務経験も持っていなかった。彼の学生時代の専攻は教育関連であり、数学やコンピューターサイエンスに関する知識はほとんどなかった。しかし、直樹は自分の可能性を信じ、新しい夢に向かって歩みを始めた。

最初のステップは、プログラミングの基礎を学ぶことだった。彼は書籍を購入し、オンラインコースを受講し、コンピューターサイエンスについての知識を積み重ねた。夜遅くまでコーディングに励み、エラーが出ても諦めずに解決策を探し続けた。

彼の友人たちは彼をサポートし、モチベーションを高めた。彼らは共に学び、プロジェクトを共同で進め、直樹の夢を実現させる手助けをした。そして、数ヶ月後、直樹はプログラミングに自信を持ち、実際のプロジェクトに参加できるスキルを身につけた。

転職活動を開始する準備が整った直樹は、さまざまなIT企業に応募し始めた。彼は自分の未経験をカバーするために、自己学習で得たスキルと知識を強調し、面接に挑んだ。未知の世界への一歩を踏み出す瞬間が迫っていたのだ。(続く)